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【コラム】「見て、見つめて、見極める」から考える自治体の防災用ウェブサイト

こんにちは。渡邉です。

私の好きな言葉の一つに、「見て、見つめて、見極める」というものがあります。

この言葉は、同じ「見る」という行為でも、ただ見ることから、
深く読み解くことまで幅があることを私たちに教えてくれます。

さて、今日は、自治体が提供する防災用のウェブサイトについて考察したいと思います。

こうしたサイトでは、災害の危険性が高まった時には、
「最新の気象情報を見ましょう」と記述されていることが多いです。

自治体の防災情報サイトを検索してみますと、表現は少しずつ異なりますが、
同じ主旨のことが多くの自治体で述べられています。

テレビ、ラジオなどで、最新の気象情報・災害情報を確認しましょう。」(弘前市 
ラジオ,テレビ,インターネットなどで最新の気象情報を確認しましょう。」(常陸太田市 
「テレビやインターネットなどで、常に最新の気象情報を入手しましょう。」(みよし市  
「浸水の被害を受けやすい地域にお住まいの方は、テレビ・ラジオ・インターネットなどによる最新の気象情報を確認しましょう。」(碧南市 
「週間天気予報等で今後の気象情報を早めに確認しておくことを心掛け、注意報や警報が発令された場合には、テレビやラジオで最新の気象情報を入手しましょう。さらに、パソコンや携帯電話・スマートフォン等でインターネットを使用できる環境にある場合は、気象庁ホームページ等でレーダーなどの様々な情報が入手できますので、下記リンク等を活用し、災害への備えに役立てましょう。」(日田市
このような表現は、ウェブサイト以外にも、自治体が発行する
防災啓発冊子などでもよく見られると思います。

さて、ここで、冒頭に紹介した「見る、見つめる、見極める」の話に戻りたいと思います。

上記で例として挙げた5つの市に限らず、自治体から住民への呼びかけには
「最新の情報を見てください」という意味で「見る」レベルの言及があります。

一方で、見たものをどう利用したらよいのかという「見極める」というレベルで
情報提供がなされることは非常にまれと言ってよいのではないでしょうか。

「見極める」という表現が気象情報の利用の文脈の中で少し分かりづらいかもしれません。
これを言い換えますと、「気象情報から地域にとっての危険性を読み解く」ということに他なりません。

気象情報の使われ方について、実践や理論的な研究を進めてきた私の目から見て、
この、「見極める」という部分にはまだまだ改善の余地があると感じています。

「見る」と「見極める」という対比をもとに議論していましたが、
最後に、日本の災害情報研究の分野で活躍されている静岡大学の牛山素行教授の
ブログ記事をご紹介したいと思います(下線は渡邉が補記したものです)。
 「最近は災害が激化して,これまでのやり方では対応できない」といった声を聞くが,筆者には違和感がある.短時間の豪雨の回数などが増加している傾向はあるが,一方で,防災のための情報や制度,それらを伝える通信システムなどは短期間に飛躍的に充実した.むしろ,充実した情報を,我々人間の側が十分使いこなせていないことが課題ではなかろうか.我々には,防災のためにできることがまだまだある.
「十分使いこなせていない」ことの背景には、使いこなす方法に関する情報提供が
おろそかにされてきたことがあるのではないかと私自身は思います。

気象情報を使いこなすことは、即ち、気象関係の情報をただ「見る」のではなく、
「見極める(気象情報から地域にとっての危険性を読み解く)」状態にまでなることではないでしょうか。

この点について、今後のブログ記事でも考察を加えて行きたいと思っています。