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【無料ツールで災害対策 vol.5】テレビの気象情報を利用するときのコツ(トップニュース編)

こんにちは。渡邉です。

トップニュースで気象情報が出てくるときがあります。
今日はそのニュースが持つ癖と、それを踏まえた上での
気象情報の使い方を紹介してみたいと思います。

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■トップニュースとしての気象情報とその内容的な傾向
今日から2回に分けて、集中豪雨に関する報道や天気予報をどう使うとよいかを書いていきます。

前回(こちらです)は台風を例にテレビの気象情報を利用する方法を述べましたが、ポイントとして指摘したことは、(1)雨量について直接的か間接的に言及されていないか注意を払うことと、(2)雨雲の動きを見て地域の大雨の可能性を把握することの2点でした。この2つの原則は、突発的な豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)対策としてもある程度有効です。

さて、報道番組では、通常の天気予報の時間枠とは別に、大雨に関するニュースがトップニュースになることがあります。こうしたトップニュースでは発生した災害や今後の雨の見込みが伝えられることがありますが、ここで伝えらえる情報に一癖ある場合があるので、これを利用する際には注意が必要です。この点について、具体例を挙げながら説明していきます。

2014年9月10日にNHK総合テレビで放送された関東地方向けのローカルニュース(「首都圏ニュース845」)のトップニュースは、「関東 大気の状態不安定/東京都内でも猛烈な雨」というものでした。この回の動画がyoutube上*1にありましたので、トップニュースの部分の内容を書き起こしました(以下のyoutubeの冒頭部分にあたります。下線部は渡邉による補記です)。


【トップニュース】
上空の寒気の影響で関東地方は大気の状態が不安定になって各地で雨雲が発達し、東京都内でも1時間に80ミリ以上の猛烈な雨を観測しています。関東地方は今夜遅くにかけて猛烈な雨が降る恐れがあり、建物の地下などへの浸水や、急な川の増水、土砂災害に警戒が必要です。 
こちらは千葉県市川市の駅前の現在の様子です。今も強い雨が降っています。午後8時までの1時間には、気象庁のレーダーによる解析で、東京葛飾区付近でおよそ70ミリ、東京江戸川区付近でおよそ60ミリの非常に激しい雨が降ったとみられます。また、国土交通省が設置した雨量計では、午後8時までの1時間に、栃木県日光市藤原で40ミリ、千葉県市川市で39ミリの激しい雨を観測しました。午後6時までの1時間には、東京都が江東区亀戸に設置した雨量計では87ミリの猛烈な雨を観測したほか、東京の都心でも午後5時20分までの1時間に69ミリの非常に激しい雨が降りました。 
また、午後5時半までの1時間には、気象庁のレーダー解析で東京台東区付近でおよそ100ミリの猛烈な雨が降ったとみられます。大気の不安定な状態は明日も続く見込みで、関東では今夜遅くにかけて、局地的に雷を伴って1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降る恐れがあります

気象庁は低い土地や建物の地下への浸水、急な川の増水や土砂災害に警戒するとともに、落雷や竜巻などの突風にも十分注意するよう呼びかけています。(以下略)
このトップニュースの例では、「いつどこで大雨が降ったか」ということを中心に構成されています。ニュースの中で使われている映像や画像としては、次のとおりとなっています。

   ・現在の市川駅前の様子(中継映像)
   ・午後6時半の葛飾区の降雨や道路冠水等の様子
   ・午後7時前の江戸川区の道路冠水の様子
   ・午後5時頃に千代田区内でマンホールから水が噴き出す様子
   ・午後8時の葛飾区の浸水状況
   ・江戸川区の冠水現場から、浸水して車が動かなくなった運転手のコメントや、
    マンホールの蓋が外れた状態であることの中継
   ・新宿駅南口から、今現在雨が降っていないこと、午後5時と午後7時頃に
    大粒の雨が降ったこと、列車の運行情報に関する中継

葛飾区のレポートの間には、右下に気象レーダーの画像が挿入されていました。気象面の情報として使われていたのはこのレーダー画像のみでした。ニュースの中で使われている映像や画像を量的に見ても明らかなとおり、大雨に関するニュースの場合は、「起こったこと」がメインになってきます。

NHK 首都圏ニュース845より















今後の雨の見込みについてですが、「関東」で「1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降る恐れ」との指摘がなされています。この情報は、テレビの気象情報を利用するときの第1のポイントであった、雨量情報の面を満たしています。ただし、関東のどこで起こるのかはトップニュース内では一切触れられていないので、どの地域が大雨になる可能性があるかという第2のポイントがつかめません(ちなみに、番組後半の気象情報の中で解説されています)。

大雨の影響がある地域を特定しない情報だけでは、備えが本当に必要な地域に対して警戒が呼びかけられないのはもちろん、雨が実際には終わっている地域に向けて不要な備えを呼びかけていることにもつながります(例えば東京都内の降雨は番組の放送時点ですでに終わっていた*2ので、新宿駅からの中継は気象面だけから言えば全く無意味でした)。

災害状況の描写や注意喚起に力が入れられていても、細かい予測情報が伴わないというのが、トップニュースにしばしば見られる構造的な課題です(もちろん、すべてのトップニュースがこの形式というわけではありません)。ここで取り上げた例が特別というわけではなく、例えば台風情報などで各地の放送局からレポートする形式でも同じような傾向があると言えます。こうしたニュースに接したときは、では「私の地域ではどうなるか?」という視点を持って他の情報を集めることが重要となってきます。

明日はこのニュース番組の後半の気象ニュースを題材に、気象情報の利用に関するコツ(集中豪雨編)をまとめていきたいと思います。

(「テレビの気象情報を利用するときのコツ(集中豪雨編)」に続く)
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(出典+余談)
*1:首都圏ニュース845(東京) - 2014年09月10日
https://m.youtube.com/watch?v=eEA_fAZ_zxA
*2:新宿から中継があった当時のレーダー画像(同番組内から)。東京都内の降雨のピークは過ぎており、発達した雨雲は一切ありません。

余談ですが、ニュース冒頭の「東京都内でも1時間に80ミリ以上の猛烈な雨を観測しています」という表現はかなり紛らわしいです。文脈から言って、おそらく夕方のピーク時の雨量(午後6時までの1時間に亀戸で観測された87ミリの降雨)を指すのですが、「たった今観測している」という意味でも取ることができます。もちろん、たった今ではないです(上の図から分かるように、雲がありません。気象予報士の渡辺さんもこの時間は東京はスルーで関東北部の雨雲の説明をしています)。単純に、「東京都内でも~を観測しました」と伝えたほうが正確ですね。