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【天気のトリビア】「明日は30%の降水確率」の理解に関する国際比較

こんにちは。渡邉です。

今日はまずクイズからスタートします。

「明日は30%の降水確率」と聞いて、みなさんはどのように理解されますか?次の3つの選択肢から選んでみてください。

1.時間的に見て明日の30%ぐらいが雨
2.対象地域の30%ぐらいが雨
3.明日のような日々のうち、30%が雨

実はこの質問と選択肢は2005年に発表された学術論文*1から引用したものです*2。

表現の仕方が若干分かりづらいので後半部分で説明しますが、正解としては3です。

ちなみにこの学術論文ではアメリカとヨーロッパの各都市でこの質問を人々に投げかけ、正答率の国際比較を行いました。

下のグラフの黒がTime(「時間」であり選択肢の1。不正解)、灰色がRegion(選択肢2の「地域」で不正解)、白がDays(選択肢3の「日々」で正解)を示します。

調査が行われた都市(グラフの左からニューヨーク、アムステルダム、ベルリン、ミラノ、アテネの順)の正答率を示した下記のグラフを見ますとニューヨークは比較的高い反面、アムステルダムのように「30%の降水確率」を時間的な意味ととらえている割合が高い都市があることなどが分かります。

30%の降水をどうとらえているかの比較グラフ*1

さてみなさんは冒頭のクイズで1~3、どれを選択されましたでしょうか?

降水確率については日常の天気予報でよく見聞きする半面、最も正答率の高かったニューヨークでも3割強が誤った理解をしているなど、誤解が生じやすい情報でもあります。

降水確率に関する日本の気象庁の説明を引用すると以下のとおりです*3。
a)予報区内で一定の時間内に降水量にして1mm以上の雨または雪の降る確率(%)の平均値で、0、10、20、…、100%で表現する(この間は四捨五入する)。
b)降水確率30%とは、30%という予報が100回発表されたとき、その内のおよそ30回は1mm以上の降水があるという意味であり、降水量を予報するものではない。
上記のb)の説明を言いかえると、同じような気圧配置が100回あった場合、そのうち約30回は1mm以上の降水となる可能性があると言っていることとなります。気象庁も子ども向けの情報*4ではこれと同じような説明をしています。

質問:降水確率はどうやって出すの? 
回答:主に過去の統計を元にして計算しています。過去の統計といっても、気圧配置などと照らし合わせ、たとえば「降水確率30%」という場合は、同じような気圧配置やその他の気象条件が10回現れたときに、雨が3回降った、という意味なんです。過去に気圧配置や気象条件などが全く同じであったときがあれば、その日の天気と同じ予報を出せばよいわけで、降水確率も必要ありませんよね。でも「過去と全く同じになる」ということは絶対にないので、降水確率が使われるのです。

さて、冒頭のクイズの正解は選択肢3の「明日のような日々のうち、30%が雨」(元の論文ではIt will rain on 30% of the days like tomorrow.)だったわけですが、ここまでの気象庁の説明を踏まえると選択肢として正しいことが分かります。

30%の降水確率とお聞きになられた時は、気圧配置から見た確率であると受け取り、時間や地域が関係ないことを覚えておかれるとよいかと思います。


(参考)
*1:"A 30% Chance of Rain Tomorrow": How Does the Public Understand Probabilistic Weather Forecasts?
http://library.mpib-berlin.mpg.de/ft/gg/GG_30_Chance_2005.pdf
*2:選択肢をその論文からそのまま抜き出すと次のようになります。
  1. It will rain tomorrow in 30% of the region.
  2. It will rain tomorrow for 30% of the time.
  3. It will rain on 30% of the days like tomorrow.
*3:予報の名称に関する用語
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/yoho.html
*4:はれるんライブラリー
http://www.jma.go.jp/jma/kids/faq/a1_22.html